塩分の取りすぎは害になると聞いたことがありますが、どの程度が適量なのでしょうか。
塩分の取りすぎが体に与える影響について疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
塩は体に不可欠な栄養素ですが、塩分の摂りすぎは高血圧など体にさまざまな悪影響を及ぼします。
日本人は塩分を摂りすぎる傾向があるので、塩分の摂りすぎには十分注意しなければなりません。
適切な塩分摂取量、塩分過剰摂取の影響、塩分摂取量の減らし方、塩分を摂り過ぎてしまった時について詳しく解説しています。
塩分を摂りすぎるとどうなるか
塩分の摂りすぎが不健康であることは知っていても、それが体にどのような影響を及ぼすのか、正確にはわからない方も多いでしょう。
ここでは、塩分の摂りすぎが体にどんな影響を及ぼすのか、
- 短期的な影響
- 長期的な影響
に分けて説明します。
食塩過多による短期的な影響

喉の渇き
食塩の主成分であるナトリウムの濃度が血液中で高くなると、体はナトリウム濃度を必要なレベルまで戻すために水分を多く必要とします。
食後やけに水が飲みたくなるなと感じたらもしかしたら塩分過多のサインかもしれません。
むくみ
のどが渇いて水分を取りすぎた場合にも、むくみの原因となることがあります。
人間の体の約60%は水分で構成されており、むくみは水分分布のバランスが崩れることで発生します。
体内の水分の約3分の2は細胞内、3分の1は細胞外です。
細胞外の水分は、血管外の細胞と細胞の間を満たす間質液と血液に分けられる。
間質液は毛細血管壁の小さな穴からしみ出し、細胞に酸素と栄養を送り、二酸化炭素と細胞の代謝老廃物を毛細血管に戻す。
何らかの原因で毛細血管からしみ出す水の量が増えたり、逆に間質液から血管に戻る水の量が減ったりすると、間質液が増え、むくみが発生するのです。
水分の摂り過ぎは、血管から漏れ出す水分の量を増やすため、むくみの原因のひとつとされています。
食塩過多による長期的な影響
一時的な塩分過多の影響は回復しますが、塩分過多の状態が長く続くと、体に悪い影響を与えるので注意が必要です。
高血圧
塩分の過剰摂取により血液中の水分量が増えると、血管壁にかかる圧力が高まり、血圧が上昇すると考えられています。
高血圧は、日本人の約4,000万人が罹患し、生活習慣病による死亡の主な原因となっている病気です。
日本では、塩分の過剰摂取が高血圧の主な原因と考えられています。
また、高血圧により脳卒中や心臓病の危険性を高めます。
胃がん
塩分の過剰摂取は、がん、特に胃がんのリスクを高めるという報告もあります。
高濃度の食塩は胃の粘膜を保護している粘液層を破壊し、粘膜を傷つけ慢性的な炎症を引き起こすためと考えられています。
それらはピロリ菌が生着するには好都合の環境です。
また、炎症を起こした胃粘膜は格好の胃がん発生母地となります。
タコの塩もみをイメージすると分かりやすいと思います。
タコを茹でる前にヌメリを取るため大量の塩で揉みます。これと同じ原理です。
高濃度の塩分は胃の粘液を取り去り、胃粘膜を傷つけます。
日本人は塩分を摂りすぎている

普段、どれくらいの塩分を摂取しているのか、減塩したほうがいいのか、気になるところです。
実は、日本人は塩分を摂り過ぎると言われているのをご存知ですか?
日本人の平均塩分摂取量
まず、日本人の平均塩分摂取量ですが、厚生労働省の「平成20年国民健康・栄養調査」によると、1日の食塩相当量の平均摂取量は以下の通りです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20歳~29歳 | 10.6g | 8.3g |
30歳~39歳 | 10.4g | 8.5g |
40歳~49歳 | 10.6g | 8.9g |
50歳~59歳 | 10.6g | 9.2g |
60歳~69歳 | 11.5g | 10.0g |
70歳~79歳 | 11.5g | 9.8g |
80歳以上 | 10.3g | 9.0g |
塩分摂取の食事許容量
日本人の平均塩分摂取量をふまえ、考えてみてください。
厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日当たりに摂取する「食塩相当量」を男性は7.5g未満、女性は6.5g未満(18歳以上の場合)とする目標量が設定されています。
ですが、高血圧の治療や予防のためには、1日当たり6g未満にすることが推奨されています。
さらに、WHOでは1日当たりの塩分摂取を食塩相当量で5g未満に抑えることが強く推奨されています。
なので、日本人の平均塩分摂取量と日本の目標と世界の目標をふまえると大体の日本人は食塩摂取量を気にする必要がありそうです。
塩分の過剰摂取を避けるための3つのポイント
ここでは、塩分の過剰摂取を避けるために、日頃から心がけたい3つのポイントをご紹介します。
食事で使用する塩分を控える

塩分の過剰摂取を防ぐには、まず食事で塩分を減らすことが大切です。
日本料理はヘルシーと言われるが、味噌や醤油などの調味料、漬物や佃煮など塩分を多く含む食品を使うため、塩分過多になりやすいという欠点があります。
料理に塩や醤油、味噌を使うときは、目分量ではなく、軽量スプーンで計るとよいでしょう。
そうすることで、自分がどれくらいの塩分を摂取しているのかが正確に把握でき、塩分の使用量を把握しやすくなります。
また、食事に醤油や肉汁を使う場合は、かけるのではなく、つけて食べるようにすると、塩分の使用量が減り、塩分摂取量を減らすことができます。
加工食品や外食のメニューにも塩分が多く含まれていることがあります。
また、食べ過ぎたときに塩分摂取量が増えないように、塩分の多い食品を避け、塩分量を見直すことも大切です。
市販されている食品の多くは「減塩」「低塩」と表示されているので、それに合わせて摂取することが望ましい。
出汁やスパイスを使う

「塩分を減らせば、料理の味付けが薄くなるのでは……」と心配される方も多いようです。
出汁、香辛料、柑橘類の果汁、ねぎ、しそなどの香味野菜を使うのがおすすめです。
これを使えば、塩分を抑えた香ばしい料理が作れます。
味噌汁などの汁物は、具をたくさん入れて作ると、素材の味が生きて、薄味でもおいしく食べられます。
カリウムを多く含む食品を食べる

ミネラルの一種であるカリウムは、塩分(ナトリウム)を体外に排出する働きがある栄養素です。
WHOでは、16歳以上の成人は、血圧を下げ、脳卒中や心血管疾患のリスクを避けるために、毎日少なくとも3,500mgのカリウムを摂取することが推奨されています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、18歳以上の男性で3,000mg、女性で2,600mgが目標量として設定されています。
しかし、20歳以上の日本人のカリウムの1日平均摂取量は、男性2,454mg、女性2,282mgで、目標値を満たしていない。
減塩と同時にカリウムの摂取を意識的に増やすとよいでしょう。
カリウムは、野菜や果物、海藻類に特に多く含まれています。