はじめに
ウイルス感染予防には免疫力アップが大切です。病原菌やウイルスが流行しても、誰もが感染するわけではありません。免疫力を高めることで感染を予防し、万が一感染しても重症にならず早く回復できるようになります。ここではまず、免疫とは何かについて簡単に見ていきましょう。
免疫とは、体内に侵入した病原菌やウイルスなどの異物を攻撃し排除するため、もともと体に備わっている機能です。この免疫には次の2種類があります。
- 自然免疫 生まれつき体に備わっている防御機能
- 獲得免疫 自然免疫では排除できない異物を排除する機能
自然免疫とは生まれつき体に備わっているもので、血液中や全身の組織に存在するマクロファージやNK細胞といった免疫細胞が働いているシステム。私たちが病気にならず毎日元気でいられるのは、この自然免疫のおかげです。
一方、獲得免疫はマクロファージやNK細胞が排除しきれなかった病原菌やウイルスを攻撃するもので、さらに一度感染した病原菌やウイルスの種類を記憶し、次に同じ異物が侵入してきたらすぐに攻撃を開始するというシステムです。ワクチンもこの獲得免疫の原理が働いています。
免疫力アップには食事が重要
免疫が正常に働いて入ればウイルスには感染しづらいもの。しかし加齢やストレスによって免疫力は低下してしまいます。
免疫力を高めるためにはストレスを解消する、体温を高くする、適度に運動するなどの方法がありますが、特に毎日の食事は大切です。
食生活が乱れたり栄養が偏ったりしていると、いつの間にか免疫力が落ちてしまうことに。ウイルスに感染しやすくなるので、注意が必要です。
どのような食材が免疫力を高めるのか、この次の項目で詳しく見ていきましょう。

免疫力を高める食材
免疫力アップに役立つ食材を知り、毎日の食事に取り入れていきましょう。特に取り入れたい食材は次の4種類です。
腸内環境を整える食物繊維
腸には免疫細胞の約70%が存在している器官で、体の免疫力も腸の状態で左右されるといっても過言ではありません。腸の働きを高め、腸内環境を整えることが免疫力アップのカギになります。
腸内にはたくさんの種類の最近が生息して、その数は100兆個以上とも言われています。この腸内細菌は善玉菌と悪玉菌に分けられますが、善玉菌には免疫細胞を活性化する作用があるもの。さらに免疫細胞と協力して、体に侵入したいウイルスと戦います。
そのため、食生活の乱れなどで悪玉菌が増えると腸内環境が悪化し、免疫力も落ちてしまうのです。
食物繊維は腸内にある善玉菌のエサになり、善玉菌を増やす作用があります。
さらに食物繊維は腸内にある有害物質を取り込み、体外に排出させる働きもします。これによりさらに悪玉菌が減り、善玉菌が増えて腸内の免疫力も高まるのです。
善玉菌を増やす発酵食品
ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵食品も善玉菌を増やします。
発酵食品は、さまざまな原料が微生物の活動により発酵してできあがるもの。発酵食品には善玉菌が豊富に含まれるため、摂取することで腸内に善玉菌をたくさん取り入れることができます。
ビタミンなどの栄養が摂れる野菜
野菜には免疫力を高めるビタミン類が豊富です。ビタミンA(βカロチン)やビタミンC、ビタミンEには抗酸化作用があり、細胞を酸化させる活性酸素を減らします。
また、ビタミンAには鼻や喉の粘膜を強化し、ウイルスの侵入を防ぐ効果もあります。さらに白血球の増加を促す作用があり、免疫力アップに役立つ成分です。
ビタミンCは、たくさん摂ると風邪にかかりにくい、かかっても早く治ると言われています。これは、ビタミンCが白血球の中に多くある成分で、免疫細胞の働きを高めているからです。積極的に摂ることで免疫力を高めます。
ビタミンB群にも、体の代謝を促し、細胞を活性化させる働きがあります。特にビタミンB1やビタミンB6は免疫機能の維持に欠かせない成分です。
免疫細胞や抗体の材料になるタンパク質
タンパク質は体の筋肉や臓器などを作る栄養素ですが、免疫細胞を作る成分でもあリます。タンパク質が不足すると十分な量と質の免疫細胞が作られず、免疫力が低下してしまいます。
また、タンパク質不足は体温の低下を招き、免疫力が下がる原因になるので注意が必要です。
LPSが含まれているものがおすすめ
近年、免疫力を高める成分として注目を集めているのがLPSです。LPSは土の中に生息する細菌に含まれている成分。LPSの免疫力を高める効果は、研究で解明されています。
LPSはマクロファージを活性化する!
LPSが免疫力を高めると言われているのは、マクロファージ を活性化する作用があるからです。
マクロファージの表面にはいろいろな物質をキャッチするレセプター(受容体)があり、LPSはこのレセプターのひとつ「TLR4」と結びつきます。
LPSと結びついたマクロファージは、その核の中にある遺伝子が揺り動かされて活性化します。
マクロファージは異物を食べて感染を予防する!
マクロファージは血液中や体の組織、臓器などあらゆる場所に存在して病原菌やウイルスの侵入を見張っています。
万が一これら異物が体に侵入してきたら、これを細胞の表面にある受容体でキャッチ。食べることで病気の感染から体を守ります。
野菜、穀類、海藻類に多く含まれる
LPSは土の中にいる成分なので、畑で育つ野菜や穀類、土壌のある海で採れる海藻類に多く含まれています。穀類は殻の部分に多く含まれているので、玄米など精白していないものがより多く含まれているのが特徴です。
農薬や化学肥料の使用で細菌類は減ってしまうため、減農薬や有機農法で作られた野菜を食べる方がLPSを多く摂取できます。海で採れる海藻類であれば、農薬や化学肥料の問題もなくLPSが摂取できます。
専門家に聞いた!免疫力を高めるならこれを食べよう
この項目では、特に免疫力アップにおすすめの食材を専門家がピックアップして紹介します。ぜひ、毎日の食事に取り入れてみてください。
ビタミンAやビタミンEが豊富なかぼちゃ
かぼちゃは免疫を高めるビタミンA(βカロテン)が豊富です。ビタミンAは鼻や喉の粘膜を強化するため、ウイルスの侵入を防ぐ効果が期待できます。
かぼちゃには他にも抗酸化力の高いビタミンEやミネラルが含まれ、免疫細胞の酸化を防ぎます。かぼちゃは食物繊維も多く、腸内環境を整えることでも免疫力アップに貢献するもの。積極的に取り入れましょう。
ネバネバがマクロファージを活性化する長ネギ
ネギの青い部分に含まれるヌルヌルとした粘液部分には、免疫を活性化させる作用があります。この粘液にはさまざまな物質が含まれていて、人や動物の実験では、マクロファージを活性化する効果が確認されています。この効果は加熱しても失われません。できるだけ青い部分の多いネギを食べるようにするとよいでしょう。
また、長ネギに含まれる香り成分「アリシン」には、血管を拡張して血流を良くする効果があります。血流が良くなることで血液中の免疫細胞も活性化されます。このアリシンを摂取するためには、生のまま食べることが大事。薬味などにして、積極的に生のネギも食べるようにしましょう。
善玉菌を増やすヨーグルト
ヨーグルトに含まれている乳酸菌やビフィズス菌は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。手軽に善玉菌を増やせる食材なので、毎日食べる習慣にしたいですね。
腸内の免疫細胞を活性化させる納豆
納豆に含まれる納豆菌は腸内の免疫細胞を活性化させ、腸内環境を整える作用があることがわかっています。
納豆には細胞の再生を担うビタミンB群や抗酸化作用のあるビタミンEも含まれ、免疫力アップには欠かせない食材といえるでしょう。
フコダインが免疫細胞を強化するわかめ
わかめに含まれるフコダインという成分は、免疫細胞を強める効果が確認されています。フコダインはわかめのヌルヌルしている部分にある成分。特にわかめの根であるメカブに多く含まれています。
また、わかめにはアルギン酸という食物繊維が含まれ、腸内環境を整える効果も。マグネシウムや亜鉛など免疫力の維持に必要なミネラルも含まれており、免疫を高めるために大切な食材です。
専門家おすすめ!免疫力を高めるレシピ
ここからは免疫力アップに役立つ食材を使った、専門家おすすめのレシピを紹介します。簡単に作れるものをピックアップしたので、ぜひ毎日のメニューに取り入れてコロナに負けない体を作ってください!